金の売却で儲けた!その時かかる税金と確定申告の方法
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お手持ちの金地金や金が使用されたジュエリーなどを売却した際、儲けを手にしたら税金はかかるのでしょうか。
答えはYesです。
売却によって得た利益は所得とみなされ、課税対象となります。
もちろん全てのケースで税金が課されるわけではありません。一方で、非課税と思っていたら課税対象だった!というケースもあるため注意が必要です。
この記事では、金・金製品の売却時に税金がかかるケースとかからないケース。かかった際の課税対象額の算出方法や確定申告の方法を解説いたします。
1.金の売却時にかかる税金
投資としてインゴットや地金型金貨を保有している方は、売却の際に出た利益が課税対象だということを知らなくてはなりません。
地金を売って売却益が出た場合は、原則「譲渡所得(資産の譲渡によって得られるもので臨時所得の一つ)」という扱いになり、他の所得と合算する総合課税の対象です。
この時の対象は売却額ではありません。
売却額から金の購入金額や売却にかかった費用を差し引いた売却益となります。
譲渡所得は年間(1月~12月)50万円までの特別控除があり、それ以下であれば非課税です。
しかし、その他の譲渡所得と合わせて50万円超となった場合は、控除分を差し引いた額が課税となるのでご注意ください。
なお、ご自身の譲渡所得を考えた時、どれが対象となるのかわからないといった方もいらっしゃるでしょう。譲渡所得には土地や借地権、株式や骨董品・宝石などが含まれますが、事業や生活に用いられるか、また価格によって対象・非対象があります。「これは譲渡所得?」と決めかねる場合は、所轄の税務署や税理士に相談することをお勧めします。
なお、繰り返し何度も金の売買を行っていた場合は「臨時所得」ではなく営利目的で得た所得とみなされ、事業所得または雑所得となる可能性があります。
2.金の売却益の課税対象額の計算方法
課税対象となる売却益の算出の仕方をご説明しますが、その金をどれくらいの期間保有していたかで異なります。
と言うのも、保有期間が5年を超える場合は課税対象となる所得を半分に減額することができるのです。
つまり長く保有した方がお得ということですね。
購入から売却までの金保有期間が5年以内のケースを短期譲渡所得、保有期間が5年以上のケースを長期譲渡所得と呼びます。
① 短期譲渡所得の計算方法
(地金の売却益+その他の譲渡益)-50万円=課税対象額
② 長期譲渡所得の計算方法
(地金の売却益+その他の譲渡益)-50万円の総額÷2=課税対象額
③ 譲渡所得が短期と長期両方ある場合
短期譲渡譲渡所得から優先して特別控除の50万円を引き、控除額が余った場合は長期譲渡所得から差し引くこととなります。
なお、税率は年間所得金額によって異なります。
3. 思わぬ課税を招く!金の売却時に確認したいあるモノとは
金地金を購入した際、「計算書」が渡されます。
これは取得価格を証明する書類ですが、売却時に計算書がないと、売却額の95%が利益とみなされ課税対象になってしまいます。
例えば300万円で購入したインゴットを400万円で売った場合、売却時に費用がかかっていないと仮定して売却益は100万円です。
しかし、300万円という購入金額が証明できないと、売却益は285万円とみなされてしまうということ。
こうなってしまっては大損です。
購入代金の振込証明書や家計簿などがあれば計算書の代わりとなる可能性もありますが、税務署の判断を仰ぐ形となり、絶対大丈夫、というわけではありません。
買取店に出す前に、計算書を用意しましょう。
ない場合は一度所轄の税務署または税理士に相談してみてください。
4.免税・減税措置はある?
給与額が年間2,000万円以下の給与所得者で、売却益が20万円以下であった場合は申告不要です。
また、前述のように年間で譲渡所得が50万円までは控除の対象となるので免税されます。
所得税ではありませんが、金にまつわる税金の一つ・相続税。
「金を仏具にすれば相続税がかからない」という話をたまに耳にします。
実は、「日常礼拝用」であり「投資対象以外」の仏具は非課税となります。
しかしながらこれが必ずしも適用されるとは限りません。
数千万単位といった高価な仏具を大量に所有していたり、亡くなる間際に仏具を買い占めていたりした場合、相続税が課されることもあります。
5.金を売って儲けたら確定申告をしよう
かつては税務署の目をかいくぐりやすいなどと言われていた金の売却所得。
現在では、売却価格が200万円を超える場合は売却者のマイナンバーの提示義務、および買取業者側は税務署に支払調書として支払金額(買取金額)、および売却者情報などを提出しなくてなりません。
税務署の監視は年々厳しくなっています。
そのため、金を売って儲けた場合、必ず確定申告が必要かを確認しましょう!
前述のように、年収2,000万円以下の給与所得者で金の売却益が20万円以内の場合は申告は不要です。
ただし、年末調整をしていない人は確定申告をしてください。
確定申告では、所得の種類を「総合譲渡所得」、資産の種類を貴金属とし、譲渡所得の内訳を申告します。
その際、譲渡先や譲渡(売却)した日、売却理由など様々な情報が必要になってくるので、事前に必要項目を確認しておきましょう。
6.売却損がある場合は?
何らかの事情で購入時より安い金額で金を売らなくてはならない。そんな時に出た売却損は他の所得金額から損益通算(相殺すること)できる場合があります。
所得区分によって可否が変わってきます。
金の売却損の損益通算は、以下をご覧ください。
① 所得区分が譲渡所得の場合
譲渡所得に区分される場合は、同一年内に発生したその他の譲渡所得から売却損を控除することが可能です。個人で金を買取店に持ち込む方の多くが譲渡所得に区分されているかと思います。
そこで気をつけなくてはならないのは、他の所得からは差し引きができないこと。譲渡所得は生活にどうしても必要な資産ではない、とみなされるためです。
② 所得区分が雑所得の場合
雑所得に区分される場合は、同一年内に発生したその他の雑所得から売却損を控除することが可能です。
譲渡所得同様にその他の所得からは通算することはできませんが、給与所得者で年間2,000万円以内の収入であれば、他の雑所得と合わせて20万円以内の場合、確定申告は不要となります。
③ 所得区分が事業所得の場合
事業所得に区分される場合は、他の所得と損益通算が可能です。
通算後に純損失(控除後、差額がマイナスになること)が残った時、青色申告をしていれば翌年以降3年間は所得金額から繰り越し控除が可能です。
一方で事業所得の損益通算において、譲渡所得との相殺ができないケースがあります。それは株式など生活必需品でない資産です。
金の売却損の所得区分が譲渡所得の場合は可能ですが、事業所得の場合は損益通算時に注意が必要です。
7.金が使われたジュエリーを売った時はどうすればいい?
金が使われたジュエリーなどは生活用動産の売却となり、金地金と要件が異なります。
ジュエリー形態の場合は一個または一組の売却益が30万円をこえている場合に課税対象となります。
これは一度の取引ではありません。一度の取引で数点ジュエリーを買取店に持ち込んだ場合、その一点一点の売却益が30万円を超えている時に対象となります。
所得区分は金地金同様に取引状況によります。
しかしながら、ジュエリーの場合は購入額を売却額が上回ることはそうありません。
金地金のように確定申告が必要、という事態はあまりないでしょう。
8.まとめ
金の売却時に得た利益の税金や、確定申告について、また、売却損が出た場合の対処法をご紹介いたしました。
① 金地金の売却益は課税対象となること
② 保有期間によって課税額の算出方法が異なること
③ 金の売却には購入額の証明が必要なこと
④ 一定の売却益は必ず確定申告しなくてはならないこと
⑤ 売却損が出た場合は損益通算ができる可能性があること
以上のことにご留意ください。
弊社はで税務、税理の専門的なご相談、ご案内は出来かねますので、ご不安な点がございましたら、所轄の税務署や税理士さんにまず相談してみることが重要です。
また、こちらの記事は2019年1月時点のものですので、法律の改正などがある場合は上記が当てはまらない場合がございますので事前にご確認の程をお願いいたします。