黄色が美しいシトリンを解説!トパーズやクォーツとは違う?
クォーツあるいは水晶と聞くと、無色透明の鉱物が思い浮かぶことでしょう。
しかしながら、柑橘類の果実のように爽やかに、美しいイエローに色づいたものもあります。そのイエロー・クォーツこそがシトリンです。
この記事では、そんなシトリンについて解説いたします。
1. シトリンとは?
① DATA
鉱物名:水晶(石英)
和名:黄水晶(きずいしょう)
色:透明、あるいは淡黄色~帯褐黄色
モース硬度:7
劈開:なし
産地:ブラジル,チリ,インド,スイス,フランスなどヨーロッパ大陸,マダガスカル,モザンピーク,タンザニアなど
宝石言葉:友情,希望,潔白,繁栄
② 歴史
鉱物学的には石英と呼ばれることの多い水晶は、英語でクリスタル、ドイツ語でクォーツを指し、紀元前の時代から人々に親しまれてきました。
産出地が比較的散布していることから、世界中で幅広く知られていることも特徴で、わが国においても平安時代の書物などで関わりを垣間見ることが可能です。
そんな石英は含有する物質によって色味を変えます。
今回ご紹介するシトリンは美しいイエローカラー。日本では黄水晶と呼ばれています。
ヘレニズム時代(紀元前323年~紀元前30年頃)、様々な文化が花開き、ヨーロッパ文明の基礎を築いたと名高いギリシャの地において、初めて宝飾品として重宝されていたようです。
また、幸運をもたらす石として信じていた民族もあります。
古代、人々は鉱物に今よりも特別な意味を定義していましたが、シトリンはその力強さ・珍しい色味から(実際、天然のシトリンの稀少性はきわめて高い)、魔除け、病気治癒、繁栄などの効果が求められました。
今でも11月の誕生石であり、「太陽を象徴する」「商売繁盛する」などの意味を持つとされています。
なお、シトリンの語源はインド原産の柑橘種「シトロン」です。ちなみにシトロン自体がラテン語のシトリーナ由来で、「黄色」とそのままの意味を持ちます。シトロンはジャムや飲料の果汁などに重宝されますが、レモンのように鮮やかなイエローをしていることが特徴で、シトリン鶯やシトリンセキレイなど、宝石のシトリン以外にも動植物の名前で用いられていることがあります。
ちなみに11月の誕生石にもう一つトパーズが挙げられますが、実はシトリンとトパーズは混同されていました。確かにトパーズも石英と似たケイ酸塩鉱物にあたり、原石はパット見では区別がつきづらいでしょう。
実際はトパーズとは別物ですが、イギリスを始めとしたヨーロッパでシトリンを「シトリン・トパーズ」として販売していた歴史から、今なおこのように名づけられた商品も市場に出回っています。
2. シトリンの特徴
シトリンは前述の通り石英ですが、 微量の鉄イオンが含有することによって黄色味~褐色を帯びることとなりました。色の濃淡を問わず、黄色味を帯びた石英をシトリンと呼んでおります。
そう、シトリンの特徴と言えばそのカラー。明るいパステルイエローからゴールデンに近いゴージャスなもの、マンダリンオレンジや赤みが強いものまで様々ですが、一般的な水晶とは一線を画す楽しさがあります。
しかしながら天然のシトリンはなかなか採掘されません。現在市場に出回るシトリンの多くが、アメジスト(紫水晶)やスモーキークォーツ(煙水晶)を熱処理したものです。
ただ、同じ結晶の中にシトリンとアメジストの両方の色味を出す鉱物がボリビア南東部のアナヒ鉱山で産出します、このクオーツはアメジストとシトリンのバイカラーの為、アメトリンと呼ばれます。
しかし、天然のアメトリンはこのボリビア産のみと言われており、市場に流通する多くのアメトリンは、シトリン同様に加熱処理によってバイカラーになったものです。
なお、同じイエロー系で「レモンクォーツ」と呼ばれるクオーツもあります。ただ、こちらは硫黄由来の発色で、グリーンを感じさせるフレッシュなレモンのような色合いであるため、オレンジッシュイエロー系のシトリンとは区別されています。
天然シトリンで、しかも宝石質の個体はなかなか採掘できませんが、ブラジルやスペイン、ロシア、マダガスカルなどで産出を確認することができます。
とりわけブラジルはシトリン名産地。リオグランデ・ド・スル州というブラジル産南端の土地がその大きいところを占めますが、リオグランデ・シトリンとして市場で高い価値を誇ります。
その他地域としてはブラジルと同じ南アメリカ大陸に位置するウルグアイ。あるいはマダガスカル。そして近年ではベトナムで発見されています。
シトリンは石英の構造上、インクルージョンやクラックが多いため、ワックスやオイル、樹脂などでエンハンスメントされているものも少なくありませんが、クラックの多いものはビーズ型にカットされ、安価なアクセサリーに使用される為、高級宝飾品となる事は殆どありません。透明度の高いシトリンは加熱以外の処理は施されていないものが一般的ですが、紫外線に弱いので、長時間直射日光下にさらされると退色してしまうこともあります。
そのため保管には注意が必要となります。
3. シトリンの価値
水晶類全般に言える事ですが、産出量がとても多い事、大粒の石も多い事などから、シトリンは高価な宝石ではありません。
しかしながら加熱処理がされていない天然シトリンの価値が見直されていること。加えて「商売繁盛」「豊かさ」をシンボライズすることなどから、アジア圏を中心に需要が高まっているようです。また、ティファニーやショーメなどのハイジュエラーもシトリンを使用したジュエリーを多く作っていますし、最近ではイギリスのキャサリン妃がおおぶりのシトリンの指輪を身に着けており、数十万円からあるいは200万円超えの価値があると推定されるという話もありますが、シトリンそのものの価値ではなく、ジュエリーや身に着けていた人の価値という方が正しいかもしれません。
非加熱の天然シトリンはコレクターズアイテムの要素も持っており、クラックの無い宝石質のものは極めて少ないため、お好きな方にはたまらない魅力もあるようです。
4. まとめ
イエローカラーが見た目に楽しくも美しい、シトリンについて解説いたしました。
シトリンとは石英(水晶、クォーツ)の一種で、含有される微量の鉄イオンによってその色味を実現していること。アメジストと生成過程が似ている、もしくはアメジストを加熱したものであるため、非加熱の天然シトリンへの需要は高まっており、好きな方にはたまらない宝石であることをお伝えできたでしょうか。
パワーストーンとしての効能も取りざたされておりますので、気になる方はぜひストーンショップを覗いてみてくださいね。